相続する土地が再建築不可だった場合の対策
「相続した家は建て替えられない」と言われたというご相談があります。京都市内では路地の奥や間口の狭い敷地で起こりやすい問題です。
ただ諦める前に確かめることがあります。京都市には路地のための独自の制度もあります。順に整理します。

1、本当に再建築不可か確かめる
最初にお伝えしたいのは「再建築不可」と言われた土地が、実は判定を受けていないだけということがある点です。
京都市の道路種別の区分
- 42条1項1〜5号:幅員4m以上の道路、位置指定道路など
- 42条2項:幅員1.8m以上4m未満で指定を受けた道
- 42条3項:2項道路のうち水平距離の指定を受けたもの
- 非道路:建築基準法上の道路でないと判定されたもの
- 未判定:道の形はあるが種別が示されていないもの
「未判定」なら結論は出ていません
前面の道が未判定の場合まだ非道路と決まったわけではありません。京都市では道路種別判定依頼という手続きで判定を求められます。判定の結果、2項道路と認められることも。まずは現状の確認からです。
指定道路図で確認できます
道路の種別は京都市地図情報提供サービスで閲覧・出力できます。建築指導課の窓口でも閲覧できますが2026年5月18日から窓口での写しの交付は廃止とされています。なお電話では道路種別の回答は行われていません。
2、なぜ建てられないのか
建築基準法では建物の敷地は道路に2m以上接していなければならないとされています。これが接道義務です。
再建築不可になる主な理由は前面の道が建築基準法上の道路でない(非道路)、道路に接する間口が2m未満、通路を通って奥に入る旗竿地・路地奥の形の3つです。
京都に多いのは路地奥の形です
京都市中心部では細い通路の奥に建物が並ぶ形が数多くあります。通路が建築基準法上の道路でなければ奥の敷地は接道義務を満たしません。長年建物があっても、建て替えの段階で問題になります。
なお既存の建物に住み続けること自体は制限されません。問題になるのは建て替えや一定規模以上の増改築をするときです。

3、京都市の路地再生の制度
ここが京都ならではの部分です。京都市は路地の町並みを資産と位置づけ独自の制度を設けています。
主な制度
- 路地のある町並みを再生するための道路指定制度:3項道路の水平距離指定や非道路の道路化を申請できます
- 接道許可制度:敷地ごとに、許可基準を満たせば接道要件が緩和されます
- 連担建築物設計制度:路地全体をひとつの敷地として設計します
2022年度に使いやすくなりました
接道許可制度では都市計画法の適用時(1971年)に存在していた道は、通路権利者からの同意が一部不要になりました。全員の同意が得られず進まなかった案件に道が開けた改正です。あわせて道路斜線制限の後退緩和や天空率の準用も可能になり、勾配屋根の形態制限は廃止されました。
路地全体で考える方法もあります
連担建築物設計制度では路地に立ち並ぶ建物が2階建て以下、複数方向への避難が可能などを条件に小規模建築物認定基準が設けられました。個別では難しくても路地全体で取り組めば実現することがあります。
防火性能の向上などが条件です
いずれの制度も無条件に認められるものではありません。防火性能の向上や出火の抑制といった安全面の対策が求められます。工事費もかかるため建て替えの計画と一体で検討する必要があります。
京都市は路地にのみ接する敷地の建替え診断ツールも公開しています。まずご自身の敷地が制度の対象になりうるか確かめてみてください。
4、43条2項の認定と許可
国の制度としても救済の仕組みがあります。
道は2つあります。43条2項1号の認定(一定の基準を満たす場合に認定を受けて建築)と43条2項2号の許可(周辺の状況などを審査して許可)です。
「但し書き」と呼ばれてきた制度です
かつて43条の但し書きに規定されていたため「43条但し書き」という呼び方が広く使われています。空地に接している、通路に2m以上接しているといった条件のもと、建築審査会の同意を得て許可されます。
一度の許可で終わりとは限りません
許可はその建築計画に対して与えられるものです。将来さらに建て替えるときは改めて申請が必要になります。「一度許可を取れば以後は自由」という性質のものではありません。
5、隣地との交渉という方法
制度を使わずに物理的に接道を確保する方法もあります。
方法は3つ。隣地の一部を買う(間口を2m以上にする)、隣地の一部を借りる(通路として使う承諾を得る)、隣地と一体で売る(合わせれば接道を満たす場合)です。
一体で売ると価値が上がることがあります
隣の方も同じ悩みを抱えていることがあります。2つの敷地を合わせれば接道義務を満たし、再建築可能な土地になる——という場合、別々に売るより合計で高くなることも。隣地の所有者との関係が良好なら検討の余地があります。
交渉には時間がかかります
隣地の方にも事情があります。先方が高齢で判断が難しい、相続が済んでいない、連絡が取れない——こうした状況では話が進みません。当事者がご健在で関係が良いうちに動くことが大切です。
6、建てられないままでも使える道
建て替えができなくても打つ手はあります。
4つの選択肢
- リフォームして使う:建て替えずに改修。規模によっては可能です
- 賃貸に出す:京町家は需要があることも
- 隣地所有者に売る:隣にとっては価値がある土地です
- 買取業者に売る:再建築不可を扱う業者もあります
京町家としての価値があることも
京都では路地奥の京町家を改修して住む、宿や店舗として使うという流れがあります。再建築ができないのは制約ですが建物自体に価値が認められる場合もあります。一般的な住宅としての評価とは別の見方です。
住宅ローンが使いにくい点に注意
再建築不可の物件は買主が住宅ローンを組みにくいため、現金で買える方に限られます。結果として売却価格は相場より低くなるのが一般的です。売るならこの前提を踏まえた価格設定が必要です。

7、相続する前に調べたいこと
相続が起きてから慌てないために生前に確かめておけることがあります。
確認リスト
- 前面の道の種別(地図情報提供サービスで確認)
- 間口の実測(2m以上あるか)
- 通路の所有者(私道なら名義と持分)
- 過去の許可や認定の記録があるか
- 京都市の制度の対象になりうるか
通路の権利関係がいちばんの鍵です
路地奥の敷地では通路の持分を持っているか、通行・掘削の承諾があるかが決定的です。持分がなければ水道管の工事ひとつにも承諾が必要です。書面が残っているか確認し、なければ関係が良いうちに取り付ける——これが最も効く備えです。
相続登記は義務になっています
再建築不可であっても相続登記は必要です。2024年4月から義務化され相続を知った日から3年以内に申請することとされています。義務化前の相続も2027年3月31日までが期限です。「使えない土地だから放置」は通りません。
私たちができることと、できないこと
当社は不動産の売買を扱う会社です。道路の状況や権利関係の確認、売却の見通しはお調べできます。一方で建築の可否や許可の申請は建築士・京都市建築指導課の領域です。制度の適用はそちらへご確認ください。

まとめ
押さえておきたいポイント
- まず道路種別を確認:「未判定」なら結論は出ていません
- 京都市には路地再生の制度がある:2022年度に使いやすくなりました
- 43条2項の認定・許可:国の制度としての救済もあります
- 通路の権利関係が鍵:持分や承諾書を確認しておきます
路地奥や間口の狭い物件もお調べします。
8、まずはご相談ください
「再建築不可と言われた」「売れるのか知りたい」——お気軽にどうぞ。

※本記事は2026年10月時点の情報をもとにした一般的な解説です。道路種別や制度の適用は敷地ごとに判断され、要件や運用は変更されることがあります。建築の可否は京都市都市計画局建築指導部建築指導課(075-222-3620)または建築士にご確認ください。