京都の不動産価格が高いうちに考える相続対策
京都の地価は上昇が続いています。資産が増えるのは良いことに思えますが、相続の観点では二つの顔があります。
評価が上がれば税負担も重くなる。一方、売るなら有利な時期でもある。この両面をどう扱うか整理します。

1、価格が高いのは有利か不利か
結論から申し上げるとどちらでもあります。何を目的にするかで評価が逆になります。
価格上昇の二つの面
| 観点 | 価格が高いと |
|---|---|
| 相続税 | 不利(評価額が上がり税額が増える) |
| 売却 | 有利(手取りが増える) |
| 納税資金 | 不利(税額が増え現金が必要に) |
| 分割 | 不利(代償金が大きくなる) |
「持ち続ける」ほど不利が積み上がります
売るつもりがあるなら高値は追い風です。しかし使う予定のない不動産を持ち続ける場合、上がるのは税額と代償金の負担だけ。恩恵を受けないまま負担だけが増えていくという構図です。
2、京都の地価はどう動いているか
数字で確認します。上昇は一時的なものではありません。
京都市の公示地価(住宅地・坪単価の目安)
| 年 | 坪単価 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2022年 | 70.8万円 | +0.3% |
| 2024年 | 74.0万円 | +3.2% |
| 2025年 | 77.0万円 | +4.0% |
| 2026年 | 80.0万円 | +4.0% |
※民間集計による目安です。集計方法により数値は異なります。
中心部と周辺部で差があります
区ごとに見ると東山区、下京区、南区、中京区は年8〜10%近い上昇、左京区、北区、山科区、西京区、右京区は2〜4%台という開きがあります。商業地はさらに大きく2026年に前年比+10%超とされています。どのエリアかで事情は変わります。
相続税の評価も連動します
相続税の計算に使う路線価も同じ方向に動いています。2026年の京都府の路線価は住宅地が前年比+3.3%、商業地が+10.6%とされています。何もしなくても毎年評価額が上がっているということです。

3、評価が上がると税額はこう変わる
どのくらい影響するのか、計算してみます。
評価3,000万円の土地で試算
年3%の上昇が続くと5年後は3,478万円(478万円増)、10年後は4,032万円(1,032万円増)。相続税率20%なら5年で約96万円、10年で約206万円税額が増える計算です。
基礎控除を超えるタイミングが早まります
より影響が大きいのはこれまで課税対象でなかった方が超えてしまうケースです。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で年々増えるものではありません。評価だけが上がれば、いずれ超えます。「以前はかからないと言われた」方ほど確認の価値があります。
小規模宅地等の特例は効き続けます
自宅の土地なら330㎡まで80%減額の特例があります。評価が上がっても特例が使えれば影響は小さくなります。逆にいえば特例が使えない土地ほど上昇の影響を受けます。「使っていない土地」がいちばん負担の増えやすい形です。
4、「売れる価格」と「評価額」は違う
ここが判断の鍵です。二つの金額は一致しません。
価格には種類があります。路線価(相続税の計算に使う。公示価格の8割程度が目安)、公示地価(国が公表する標準的な価格)、実勢価格(実際に取引される価格)です。
評価3,000万円なら、売ればいくらか
路線価が公示価格の8割という目安で逆算すると公示価格ベースでは約3,750万円。人気のエリアでは実勢価格がこれを上回ることも。税金の計算では3,000万円、売れば3,750万円以上——この差が現金化を考える根拠になります。
ただし京都は物件差が大きい
この関係が当てはまらない物件もあります。路地奥、間口が狭い、再建築不可、境界が未確定——こうした事情があると路線価より安くしか売れないことも。一般論ではなく実際の査定で確かめてください。
5、高いうちに現金化するという判断
使う予定のない不動産なら今は出口として悪くない時期です。
現金化の利点
- 高く売れる:上昇した価格で手放せます
- 分けやすくなる:現金なら正確に分割できます
- 納税資金になる:他の不動産の相続税に充てられます
- 管理の負担が消える:固定資産税も修繕も不要
売却益には譲渡所得税がかかります
売れば所得税・住民税(長期なら20.315%)が生じます。取得費が不明なら売却価格の5%を取得費とみなす扱いになり税額が膨らみます。当時の売買契約書が残っていないかまず探してみてください。
現金に変えると評価は下がりません
注意点として現金は額面どおりに評価されます。不動産のような評価減がないため相続税の計算上は不利です。売ることが常に有利なのではなく「使わない不動産なら」という前提つきだとご理解ください。
6、売らずに評価を下げる方法と限界
保有を続けたい場合の選択肢です。ただしどれにも制約があります。
主な方法は3つ。賃貸に出す(貸家建付地として評価が下がる)、小規模宅地等の特例(自宅330㎡80%、貸付用200㎡50%)、生前贈与(早く移せば将来の上昇分を外せる)です。
賃貸化には3年の壁があります
貸付事業用の小規模宅地特例は相続開始前3年以内に新たに貸付を始めた宅地は原則対象外です。駆け込みでは間に合いません。すでに事業的規模(棟数÷5+室数÷10が1以上)で賃貸経営をしている方には例外がありますが、該当しなければ3年待つ必要があります。
生前贈与は税負担が重い
土地を贈与すると登録免許税は2%(相続なら0.4%)、不動産取得税もかかります。贈与税の基礎控除は年110万円しかなく小規模宅地等の特例も使えません。値上がりを外せる利点はありますが自宅の土地では不利になることが多いのが実情です。
年3%の上昇なら10年で約34%、評価3,000万円の土地なら1,000万円ほどの差になります。この効果と、贈与でかかる税金・失う特例を比べる必要があります。感覚ではなく税理士の試算で判断してください。

7、判断チェックリスト
今の時点で確かめておきたいことを整理します。
確認する項目
- 使う予定があるか(住む・使う見込み)
- 今売ればいくらか(査定を取る)
- 相続税の見込み額(基礎控除を超えるか)
- 納税資金は足りるか(現金・保険で賄えるか)
- 小規模宅地等の特例が使えるか(誰が引き継ぐか)
- 分け方の目途はあるか(相続人が複数なら)
最初の分かれ道は「使う予定があるか」です。あるなら保有して特例を活かす方向、ないなら価格が高いうちの現金化が選択肢に。この一点で方針がほぼ決まります。
地価は上がり続けるとは限りません
正直に申し上げると今後の地価は誰にも分かりません。この記事は「今が高い」という事実を前提にしたもので「今が天井だから急げ」という話ではありません。判断の材料を揃えていただくことが目的です。
私たちができることと、できないこと
当社は不動産の売買を扱う会社です。今の相場での査定、売却の見通し、物件ごとの事情の確認はお調べできます。一方で相続税の試算や贈与の設計は税理士の領域です。数字が揃ってから相談すると話が早く進みます。

まとめ
押さえておきたいポイント
- 価格上昇には二つの面:売るなら有利、持ち続けるなら負担増
- 評価は毎年上がっている:基礎控除を超える時期が早まります
- 評価額と売却価格は違う:路線価は公示価格の8割程度が目安
- 使う予定があるかで方針が決まる:まず査定で数字を揃えます
今の相場での見通しをお伝えします。
8、まずはご相談ください
「今いくらで売れるか知りたい」「持ち続けるか迷っている」——お気軽にどうぞ。

※本記事は2026年10月時点の情報をもとにした一般的な解説です。地価の数値は民間集計による目安で、集計方法により異なります。試算は仮の条件による概算で、将来の地価を予測するものではありません。相続税・贈与税の判断は必ず税理士にご相談ください。