不動産を売却した後、多くの方が見落としがちなのが確定申告です。「会社員だから確定申告は関係ない」と思っていませんか?実は、不動産を売却して利益が出た場合、会社員であっても確定申告が必須となります。
確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。逆に、適切に申告することで3,000万円の特別控除など、大きな節税メリットを受けられるチャンスもあります。
この記事では、不動産売却後の確定申告について、必要なケースから具体的な計算方法、利用できる特例、必要書類、申告手順まで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。不動産売却を予定している方、すでに売却された方は、ぜひ最後までお読みください。
不動産を売却したすべての人が確定申告をしなければならないわけではありません。まずは、確定申告が必要なケースを正確に理解しましょう。
不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合は、必ず確定申告が必要です。譲渡所得とは、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額のことを指します。
例えば、3,000万円で購入した不動産を4,000万円で売却し、諸費用が200万円かかった場合、譲渡所得は800万円となり、この金額に対して税金が課されます。
意外と知られていないのが、売却で損失が出た場合でも確定申告が必要になるケースです。これは「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」などを利用する場合です。
この特例を使えば、不動産売却の損失を給与所得などと相殺でき、すでに支払った税金の還付を受けられる可能性があります。損失が出たからといって申告しないと、この恩恵を受けられません。
譲渡所得がゼロまたはマイナスで、かつ特例を利用しない場合は、確定申告は不要です。ただし、計算の結果、本当に譲渡所得が発生していないか慎重に確認することが重要です。
不動産売却後の確定申告には、明確な期限が定められています。期限を過ぎると、さまざまなペナルティが発生するため、スケジュール管理が重要です。
確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日までです。不動産を売却した年の翌年に申告する必要があります。
例えば、2025年中に不動産を売却した場合、2026年2月16日から3月15日の間に確定申告を行います。この期間を過ぎると、無申告加算税(15〜20%)や延滞税が課される可能性があります。
確定申告の準備は、売却が完了した時点から始めることをお勧めします。必要書類の収集や譲渡所得の計算には時間がかかります。特に、古い不動産で取得時の書類が見つからない場合は、代替手段を検討する時間が必要です。
理想的には、売却完了後すぐに必要書類を整理し、年明けには申告書の作成に取り掛かれる状態にしておくとスムーズです。
確定申告で最も重要なのが、譲渡所得の正確な計算です。計算を間違えると、税額が大きく変わってしまいます。
譲渡所得は次の式で計算します。
譲渡所得 = 譲渡価額 − (取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
譲渡価額は、不動産を売却した価格のことです。売買契約書に記載された金額がこれに該当します。固定資産税の清算金なども含まれます。
取得費とは、その不動産を取得するためにかかった費用のことです。具体的には以下のものが含まれます。
ただし、建物については減価償却を行う必要があります。建物は年数とともに価値が減少すると考えられるため、取得費から減価償却費を差し引かなければなりません。
建物の減価償却費の計算式:
償却率は建物の構造によって異なります(木造:0.031、鉄筋コンクリート:0.015など)。
購入時期が古く、契約書などが残っていない場合は、「概算取得費」として譲渡価額の5%を取得費とすることができます。ただし、この場合は税額が高くなってしまうため、可能な限り実額を証明する書類を探すことをお勧めします。
代替書類としては、通帳の出金記録、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、当時の不動産価格を示す資料などが使える場合があります。
譲渡費用とは、不動産を売却するために直接かかった費用のことです。
注意点として、修繕費や固定資産税、引っ越し費用などは譲渡費用に含まれません。
具体的な例で計算してみましょう。
【ケース】
【計算】 譲渡所得 = 5,000万円 − (3,500万円 + 200万円)= 1,300万円
この1,300万円に対して税金が課されることになります。
譲渡所得が算出できたら、次は税額の計算です。不動産の譲渡所得には、所有期間によって異なる税率が適用されます。
不動産の所有期間が5年以下の場合を「短期譲渡所得」、5年を超える場合を「長期譲渡所得」といいます。
短期譲渡所得の税率:
長期譲渡所得の税率:
このように、短期と長期では約2倍の税率差があります。売却のタイミングによって税額が大きく変わるため、所有期間の判定は非常に重要です。
所有期間は、不動産を取得した日から売却した年の1月1日までで判定します。これが多くの方が間違えやすいポイントです。
例えば、2020年4月1日に購入した不動産を2025年6月1日に売却した場合、実際の所有期間は5年2ヶ月ですが、税法上の所有期間は2025年1月1日時点で計算するため4年9ヶ月となり、短期譲渡所得として扱われます。
長期譲渡所得の適用を受けるには、2026年1月1日以降まで待つ必要があります。
先ほどの譲渡所得1,300万円の例で、税額を計算してみましょう。
【長期譲渡所得の場合】
【短期譲渡所得の場合】
所有期間の違いだけで、約251万円もの差が生じます。

不動産売却時には、要件を満たせば大きな節税効果のある特例を利用できます。特に居住用財産を売却した場合は、複数の特例が用意されています。
最も一般的で効果が大きいのが、この「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」です。
適用要件:
この特例を使えば、譲渡所得から3,000万円を控除できます。先ほどの例では、譲渡所得1,300万円が全額控除されるため、税金はゼロになります。
所有期間が10年を超える居住用財産を売却した場合、3,000万円特別控除と併用して軽減税率を適用できます。
税率:
計算例: 譲渡所得が5,000万円の場合
通常の長期税率(20.315%)なら約406万円なので、約122万円の節税になります。
自宅を売却して新しい自宅を購入する場合、一定の要件を満たせば譲渡益への課税を繰り延べることができます。
主な要件:
ただし、この特例は税金が免除されるのではなく「繰り延べ」であることに注意が必要です。また、3,000万円特別控除との併用はできません。
相続によって取得した不動産を、相続税の申告期限から3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できます。
これにより、譲渡所得が減少し、税負担を軽減できます。相続不動産を売却する際は、タイミングに注意が必要です。
被相続人が住んでいた家屋を相続し、一定の要件を満たして売却した場合にも3,000万円特別控除が適用できます。
主な要件:
空き家問題の解決を促進するための特例で、2027年12月31日までの時限措置となっています。
確定申告をスムーズに進めるためには、必要書類を事前に準備しておくことが重要です。
3,000万円特別控除を利用する場合:
軽減税率の特例を利用する場合:
買い替え特例を利用する場合:
実際の確定申告の流れを、ステップごとに解説します。
まずは前章で紹介した必要書類をすべて揃えます。特に購入時の書類は紛失しやすいため、早めに確認しましょう。見つからない場合は、不動産会社や金融機関に問い合わせると再発行できる場合があります。
譲渡所得の内訳書を使って、正確に計算を行います。計算式に従って、譲渡価額、取得費、譲渡費用を記入し、譲渡所得を算出します。
特例を利用する場合は、控除額も忘れずに記入します。計算ミスがないよう、複数回チェックすることをお勧めします。
確定申告書B(第一表・第二表)と第三表(分離課税用)に必要事項を記入します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の指示に従って入力するだけで自動的に計算され、申告書が作成できます。手書きよりもミスが少なく、効率的です。
確定申告書の提出方法は3つあります。
1. e-Tax(電子申告)
2. 郵送
3. 税務署の窓口
譲渡所得税の納付期限は、確定申告期限と同じ3月15日です。納付方法は以下から選べます。
住民税は、後日送付される納付書で支払います(6月以降、通常は4回分割)。
確定申告でよくある間違いや、特に注意すべきポイントをまとめます。
購入時の書類が一切残っていない場合、概算取得費(譲渡価額の5%)しか認められないと諦めてしまう方がいます。しかし、以下の方法で実額を証明できる可能性があります。
税務署に相談すると、代替資料で認められるケースもあります。
夫婦や親子で共有している不動産を売却した場合、それぞれの持分に応じて譲渡所得を計算し、各自が確定申告を行う必要があります。
例えば、夫50%、妻50%の共有で、譲渡所得が2,000万円の場合、夫婦それぞれが1,000万円ずつの譲渡所得として申告します。3,000万円特別控除も、それぞれが利用できます。
売却する不動産と買い替える不動産の両方で住宅ローン控除を受けることはできません。また、3,000万円特別控除を適用した場合、新居の住宅ローン控除は受けられなくなります。
どちらが有利かは、ローン残高や所得額によって異なるため、事前にシミュレーションすることをお勧めします。
確定申告期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く「期限後申告」を行いましょう。
ペナルティ:
期限後でも特例は適用できますが、一部の特例は期限内申告が要件となっているため、注意が必要です。
個人が居住用不動産を売却する場合、消費税は課されません。ただし、事業用不動産や賃貸物件を売却する場合は、建物部分に消費税がかかることがあります。
売買契約書で土地と建物の価格が区分されていない場合、税務署から説明を求められることがあるため、明確に区分しておくことが望ましいです。
確定申告は自分で行うこともできますが、以下のような場合は税理士に依頼することを検討しましょう。
不動産売却の確定申告を税理士に依頼した場合の費用相場は、5万円〜15万円程度です。
譲渡所得の金額や複雑さ、特例の適用有無によって変動します。複数の税理士から見積もりを取って比較することをお勧めします。
税理士報酬は経費にはなりませんが、税額の計算ミスで過大に税金を支払ったり、ペナルティを受けるリスクを考えると、専門家への依頼は有効な選択肢です。
不動産売却後の確定申告は、多くの方にとって初めての経験で、複雑に感じるかもしれません。しかし、ポイントを押さえて準備すれば、スムーズに進めることができます。
確定申告の重要ポイント:
早めの準備が大切: 確定申告は期限直前に慌てて準備すると、書類が揃わなかったり、計算ミスが発生しやすくなります。売却が完了したら、すぐに必要書類を整理し、譲渡所得の計算を始めましょう。
不明点は相談を: 判断に迷う場合や複雑なケースでは、税務署の相談窓口や税理士に相談することをお勧めします。税務署では無料で相談できる窓口がありますし、税理士に依頼すれば確実性が高まります。
不動産売却は人生の中でも大きなイベントの一つです。適切に確定申告を行い、不要な税負担を避けるとともに、利用できる特例をしっかり活用して、賢く税金と向き合いましょう。
【関連情報】
確定申告について、さらに詳しく知りたい方や個別の状況について相談したい方は、税理士または税務署にお問い合わせください。
不動産売却の際はクラベストにご相談いただくとこういった事もお伝えさせていただきます。お問合せはこちらからお願いします!