長期優良住宅・ZEH住宅は本当に得?減税額と購入費用を比較
「性能の高い住宅のほうが減税で得になる」とよく言われます。ただ優遇の合計額と追加でかかる費用を並べて比べた話はあまり見かけません。
そこで実際に計算してみました。結論を先に申し上げると減税だけで追加費用を取り戻すのは簡単ではありません。

1、性能の区分を整理する
まず用語を揃えます。住宅ローン減税では性能によって4つの区分に分かれています。
性能の区分(上から高性能)
- 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
- ZEH水準省エネ住宅
- 省エネ基準適合住宅
- その他の住宅(2026年入居の新築は対象外)
長期優良住宅は耐久性・耐震性・省エネ性などを総合的に満たし、行政の認定を受けた住宅です。ZEH水準は断熱と省エネに特化した基準で、認定の手続きは要りません。
性質がやや違います
長期優良住宅は「長く住める家」という認定で、維持保全の計画も求められます。ZEH水準は「エネルギーを使わない家」という性能基準です。どちらが上という単純な関係ではないため、目的に応じて考えることになります。
2、優遇を全部足すといくらか
ここからが本題です。長期優良住宅と省エネ基準適合住宅を比べて、差額がいくらになるかを計算します。
試算の前提
- 新築・子育て世帯等に該当(2026年入居)
- 借入4,000万円・35年・金利1.5%
- 家屋の評価額1,200万円
住宅ローン減税の差は13年で約35万円
借入限度額は長期優良5,000万円、省エネ基準適合3,000万円で2,000万円の開きがあります。単純計算では13年で180万円ほどの差になりますが——実際の差は約35万円でした。
理由は年末残高が省エネ基準適合の限度額3,000万円を上回る期間が限られるためです。10年目には残高が3,062万円まで減り、11年目以降は差がゼロになります。
その他の優遇の差
| 項目 | 差額 |
|---|---|
| 住宅ローン減税(13年) | 約35万円 |
| 不動産取得税(控除1,300万/1,200万) | 3万円 |
| 登録免許税(保存登記0.1%/0.15%) | 約6,000円 |
| 固定資産税(減額5年/3年) | 約16万8,000円 |
| 合計 | 約55万円 |
税金の優遇だけを足すとおよそ55万円という水準です。思っていたより小さい、と感じられる方が多いのではないでしょうか。

3、補助金も合わせて考える
判断を変えるのは補助金です。2026年はみらいエコ住宅2026事業があります。
補助額(京都市は5〜8地域区分)
| 区分 | 補助額 |
|---|---|
| GX志向型住宅 | 110万円 |
| 長期優良住宅 | 75万円 |
| ZEH水準住宅 | 35万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 対象外 |
※長期優良住宅・ZEH水準住宅は子育て世帯・若者夫婦世帯が対象です。
省エネ基準適合住宅は補助の対象に入っていません。つまり長期優良住宅を選ぶと75万円がそのまま差になります。
税の優遇と合わせると約130万円
減税の差約55万円に補助金75万円を加えると合計で約130万円。ここまで来ると意味のある金額になってきます。補助金のほうが税の優遇より大きいというのが、実はこの話のポイントです。
補助金には期限と予算があります
申請は遅くとも2026年12月31日まで(ZEH水準住宅は9月30日まで)とされています。予算の上限に達すれば早く終わることもあります。補助金を前提に計画される場合は、期限と残り予算の確認が必須です。
4、追加でかかる費用
ここまでが「得」の側です。次にかかる側を見ます。
追加で必要になるもの
- 建築費の上乗せ:断熱材・窓・設備の仕様が上がります
- 認定申請の費用:手数料5〜6万円、代行費用を含めて20〜30万円
- 維持保全の義務:長期優良住宅は点検と記録が必要です
建築費の上乗せがいちばん大きい
ZEH水準にする場合一般的な住宅より200万〜500万円程度高くなるとされています。太陽光発電を載せるかどうかでも変わります。この額が優遇の合計130万円を上回ることは珍しくありません。
長期優良住宅は点検の義務があります
認定を受けた住宅は少なくとも10年ごとの点検と記録の作成が求められます。点検だけで5〜7万円程度かかり、不具合があれば補修費も必要です。30年以上にわたって続く義務だという点は知っておいてください。
5、差し引きで見た結論
差し引きの整理
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 減税の差 | +約55万円 |
| 補助金 | +75万円 |
| 認定申請の費用 | −20〜30万円 |
| 建築費の上乗せ | −200万円〜 |
つまり制度上の優遇だけでは追加費用を回収しきれないという計算になります。これが正直な答えです。
ただし差額のすべてが「余分な出費」ではありません
建築費の上乗せは断熱性能や設備という形で手元に残ります。光熱費が下がり、冬の寒さや夏の暑さが和らぎ、将来売るときの評価にも関わってきます。「元が取れるか」ではなく「その性能にいくら払うか」という問いに置き換えるのが現実的です。
光熱費の効果は幅があります
削減額は家族構成・在宅時間・設備・電気料金の水準で大きく変わります。年間で数万円から十数万円という幅があり、断定はできません。販売側の試算をそのまま信じず、前提条件を確認してください。

6、見落としやすい注意点
①納めた税金が減税の天井です
住宅ローン減税は納めた所得税・住民税を超えて戻りません。限度額が5,000万円に上がっても、納税額が少なければ使い切れません。高性能にしても減税の差がさらに縮むことがあります。
②補助金は世帯要件があります
長期優良住宅とZEH水準住宅の補助は子育て世帯(18歳未満の子)または若者夫婦世帯(いずれかが39歳以下)に限られます。該当しない場合、補助はGX志向型住宅のみが選択肢になります。
③固定資産税は評価額も上がりえます
長期優良住宅は減額期間が長い一方仕様が良い分、家屋の評価額自体が高くなる可能性があります。減額期間が2年長いことの効果が、評価額の差で一部打ち消されることもあります。
7、どういう方に向いているか
性能を上げる価値が大きい場合
- 長く住む予定がある(光熱費の差が積み上がります)
- 補助金の対象になる世帯である
- 借入額が大きく減税の限度額を使い切れる
- 住み心地や室温の安定を重視している
慎重に考えたほうがよい場合
- 総予算に余裕がなく、借入を増やすことになる
- 数年での住み替えや転勤の可能性がある
- 補助金の世帯要件に当てはまらない
「減税のために上げる」は順序が逆
減税の差が約55万円であることを踏まえると税金のために性能を上げるという判断は成り立ちにくいのが実情です。住み心地と光熱費のために性能を選び、その結果として優遇も受けられる——この順番で考えるほうが納得のいく結論になります。

まとめ
押さえておきたいポイント
- 減税の差は約55万円:限度額の差は2,000万円でも実額はこの水準です
- 補助金のほうが大きい:長期優良住宅は75万円、省エネ基準適合は対象外
- 建築費の上乗せは200万円〜:優遇だけでは回収しきれません
- 性能そのものに価値がある:光熱費・住み心地・将来の評価で考えます
性能と予算のバランスも含めてご一緒に整理します。
8、まずはご相談ください
「どこまで性能にお金をかけるか迷っている」「予算の優先順位を整理したい」——お気軽にどうぞ。

※本記事は2026年10月時点の情報をもとにした一般的な解説です。試算は仮の条件による概算で、実際の金額は借入額・評価額・納税額・仕様により異なります。制度や補助金は変更・終了することがあります。詳細は国税庁・各補助事業の公式情報をご確認のうえ、税理士等にご相談ください。